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月水金別館 映画れびゅー お気に入り度メモ (ネタばれあり)

個人的お気に入り度を☆で表しています。記録の都合上ネタバレのことが多いので、ご注意ください。

映画「愛を読む人」(2008)

原題:THE READER


お気に入り度
☆☆☆☆☆


切ない、愛の物語。
そして、ユダヤ人虐殺という悲劇を、独特の切り口で糾弾している。
抑制された深い演技と演出を得た名作。

レイフ・ファインズ、ケイト・ウィンスレット主演。
スティーブン・ダドリー監督。




15才の少年が大人の女性と恋に落ち、関係をもつ。
日々、少年は女性に本を朗読する。
あるとき、女性は突然姿を消してしまう。

法学部に進んだ少年が、ナチのユダヤ人虐殺の法廷で、元看守として被告となった女性を見る。
報告書に署名したとして、他の被告より重い判決をうけ、無期懲役となってしまう。
しかし、少年は女性が文盲であったことを知っている。

大人になった男性は、いつしか、刑務所の中の女性に、本を朗読したテープを送るようになる。
女性は、いつか文字を勉強するようになる。

20年後、女性は釈放されることになるが、他に身寄りがないため、男性が釈放後の助けとなるよう、刑務所から連絡があり、男性は女性に面会に行く。
しかし、その直後女性は自殺してしまう。
ユダヤ人収容所で生き残り、女性を有罪に導く本を書いた女性に、いくらかの遺産を残し、男性はその遺産を託され、ユダヤ人の女性に会いに行く。
現金の受け取りは拒絶したユダヤ人女性だが、ユダヤ人の識字率向上の団体に寄付することには同意する。

最後の場面は、男性が自分の娘に、自分の過去を語るところで、映画は終わる。


レイフ・ファインズ、ケイト・ウィンスレットの演技が、すばらしい。
ケイト・ウィンスレットは、完璧かつ深い演技で、アカデミー主演女優賞を受賞。


女性が少年の前から姿を消す直前、少年は美女の転校生に気持ちがぐらついていた。
朗読の様子が微妙に変わるので、女性は少年の気持ちのぐらつきに気が付いたはずだ。
女性は少年に友だちのところに戻るように言って、それから姿を消した。
女性の過去にはユダヤ人収容所のことがあり、映画の最初のあたりでは、それは明かされていないが、女性に暗い影を落としている。
そのあたりの演技が、あまりにもリアルで、見る者の心を揺さぶる。
この映画の価値を絶対的に高めており、ケイト・ウィンスレットのアカデミー賞受賞は納得できる。
女性が姿を消したのは、その暗い影のせいであり、また少年を愛していたからだとわかる。
少年はそれを理解できないでいる。
中年男性になり、最後に面会に行ったときにも、女性に対して、ユダヤ人に対する罪をとがめるようなことを言ってしまう。
そして、それによって、自分に対する女性の仕打ちをも責めている。
頭では理解できていても、心で理解できないということなのか、あるいは、頭でも理解できないのか。
女性を理解できない男性というステレオタイプが、ここにも見られる。
ナチを糾弾する同級生の男性に対して、「理解するんだ」と男性は言うが、それは理解できないでいる自分にも言っているように見える。
悪いことなのに、ユダヤ人の虐殺に関与してしまった看守の心理、そして、理由も告げずに突然さってしまった年上の女性、この二つの意味が暗に重なっている。
しかし、男性は理解できないが、その女性を愛しているのだ。
それが、男性の送った無数のカセットテープ、そして、女性がやっとの思いで書いた手紙に返事も書かず、ぞんざいに扱ってしまうところに現れている。
男性は女性を愛しているのと同時に、憎んでいる。

女性が自殺したのは、唯一の心の支えであった男性に見捨てられたと感じたからであろう。
男性は女性に、「(有罪判決を受けたことで)何を学んだか?」と尋ねる。
女性は、「読むことを学んだ」と答える。
そのまなざしは、訴えるようであり、言外に「何を学ぶのか?」と男性に反論しているかのようだ。
その答えは、男性がユダヤ人女性に遺産を持っていったときに得られる。
ユダヤ人女性は男性に、「よく収容所で何を学んだかと尋ねられるが、何も学ぶことはなかった。(そんな場所ではない。)」と答える。
それは看守の立場だった女性にとっても同様だった。
学ぶとか、そういう問題ではない。究極には、そんなことは問題にならない。
ナチのユダヤ人虐殺とは、そのようなのんきなものではないということ。

ユダヤ人虐殺という悲劇は、加害者の立場であるナチの看守にも、虐殺された人々に比べれば極わずかではあるが、充分に大きな悲劇をもたらしていた。
大部分の看守は数年の懲役刑だったが、一部の看守は重い刑に服した。
しかし、その看守も、その立場では他に何もしようがなかったのだ。
一方的に加害者とはいえない、被害者としての立場が同時にある。
そして、その看守の受けた悲劇の余波が、15才の少年の一生を変えてしまった。

収容所に入れられたが生き残ったユダヤ人、看守の女性、その女性によって一生を変えられた男性、その娘、様々な人の悲しみや苦しみ、その連鎖を過剰になることのない演出で、淡々と訴えかけてくる。この映画には大声で泣き喚く人や、叫ぶ人、虐殺の場面や死体は出てこないが、それがかえって効果的になっている。


Yahoo映画
Wikipedia


テーマ:恋愛映画・ロマンティックコメディ - ジャンル:映画

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